「久寿餅」という縁起の良い名は、その誕生秘話にあります。
川崎周辺が麦の産地だった江戸時代、天保の頃(1830〜1844)。大師河原村の久兵衛は、納屋に蓄えていた小麦粉を風雨によって濡らしてしまい、やむなくこねて樽に移し、水に溶いて放っておきました。翌年、飢餓で食料に窮し、この樽を思い出し見てみると、底に沈殿している発酵した澱粉を発見、これを加工して蒸してあげたところ、餅のようなものができたのです。
さっそく、時の川崎大師山主、隆盛上人に試食していただくと、その淡白で風雅な味わいを賞し、久兵衛の「久」の字と、無病長寿を祈念した「寿」の一字を附して「久寿餅」と名付け、川崎大師名物として広めることを薦めたといわれています。この味わいは参拝者をはじめ、多くの方に喜ばれて今なお愛され続けています。